B-05 かくして王は

 戦火に堕ち、簒奪者に汚された純白の都シュリージャ。人気の失せた宮殿に正統なる王が帰還したのは、先王がしいされて十五年ものちのことであった。
 逆賊どもに洗いざらいの調度を剥ぎ取られた裸の宮殿に、再び金の王冠が頂かれると、街道は家財を引いて都を目指す民で溢れた。砂が吹き溜まるばかりであった通りに仮設の店舗が軒を連ね、路地裏に子供の声が戻ってくる。煤が払い落とされた都は、再び白い輝きを帯びて活気づく。集えば人は噂する。今のところ善政を敷いている若き王――そう、王は若いのである。灰色がかった褐色の肌に艶やかな黒髪。深く貫き通すような漆黒の瞳。辺境から挙兵し、徐々に援軍を増やして上洛した剛毅そのままの、強靭で精悍な顔立ち。一目見た者は、若い頃の先王と瓜二つだと口を揃えて褒め称えた。だが、口さがのない者はただ否定する要素がないだけとまことしやかに伝え合った。見たところ、王の年齢は十代後半。実年齢がそれよりも多いのか、少ないのか、確かな情報は伝わってこない。
 先王が簒奪者の凶刃に倒れたのち、王妃と三人の姉姫ともども、城壁にまだ齢幼い王子が吊るされたことは、いまだ都の人々の心に生々しく残る絶望の象徴であった。後宮に隠された王の愛妾も残らず簒奪者のものとなり、王の血統は途絶えたものと誰しもが思った。十五年後、王の子を名乗る男が流星のごとく現れるまでは。
 彼はいつ生まれたのか。母親は誰なのか。本当に、先王の子なのか?
 数々の疑問を飲み込み、民は彼を受け入れた。国を荒廃させるばかりだった簒奪者の後では、正統を復活させてくれる者なら誰でもよかった。えり好みをする余裕も気力もなかった。それでも、したたかな民は不満を抱いた数だけ、心のうちで王への疑問に注釈を増やしていった。どんなに善政を敷こうと、すべての不満をなくすことはどだい不可能だ。それよりも、王は民につけ入る隙を与えないよう腐心すべきだった。狡猾な者ほど明らかなこの原理について、新王はあまりにも無知すぎた。貴族たちはみな一様に、自らが担ぎ上げた王の没落を予感して含み笑いを押し殺した。彼らは王を、当座の間王座を暖めるための人夫としかみなしていなかった。でなければ、どうして出自の怪しい男を王座になどつけてやるものか。
 この新王が、勇猛果敢にして才気走った若者であることは、これまでの経歴といくつもの武勇伝が示すとおりだ。彼は決して貴族たちに踊らされていたわけではない。彼がこの不穏の気配を気取らぬはずがない。だからなおさらのこと、王の沈黙は怪しく不気味であった。
 王はなぜ自らの出生を語らないのか?
 少しでも知恵のまわる者なら、王の真贋そのものよりも、沈黙の理由を訝った。華々しく宣伝された功績の中で、そこだけぽかりと欠けた創生の物語。いわば、神託のない預言者。民の心のよりどころとなるべき神話を、彼は欠いていた。嘘であれ、真実であれ、彼は早急に語りだすべきであった。由来を、権威を、伝説を、彼は民に示さねばならなかった。そのいずれもない王座はまったくの空虚だった。
 それから数年が経ち、人々が平穏な生活を当たり前と思うようになった頃、宮殿前の広場にひとつの立て札が立った。
『一流の語り手を求む。かの者には、サトライダムを簒奪者の手から救った英雄、ユレヒト王の真実の半生記を物語る権利を与える』
 人々は色めきたった。噂は口から口へとさざ波のように広がった。ついに、王が自らの人生を語るのだ。一流の語り手にしか語ることの許されない物語を!
 その日のうちに、都中からさまざまな語り手、吟遊詩人、玄人から腕に自身のある素人、おしゃべり女から果ては炉端で昔語りをする老人まで、いち早く王の物語を知りたいと欲する者が次々と王宮前に列をなした。大半は門前払いにされたが、実力を認められた者は留め置かれ、日が暮れてから王宮の奥へと連れ出された。
 吟遊詩人が通されたのは、灯りを抑えられた一室。山と積まれた料理の向こうに、赤ブドウ酒の杯を持った手が一本、突き出していた。だが、光はその本体にまでは及ばない。ただ、ターバンに包まれた頭部の下から、鋭い眼光を感じるだけである。
「西から旅すること幾千夜。砂の国に深緑の囀りを届けに参りました。さすらいの吟遊詩人トーラスと申します」
 色白の吟遊詩人が頭を下げると同時に、腕の中でリュートがぽろろんと不安げな音を出す。いつもの口上も心なしか震えている。いかなる王侯貴族にも物怖じしないはずなのに、今宵の饗宴にはどこか不穏なものを感じていた。同席者のない晩餐。小さな部屋にいるのは、トーラスと王を除けば、彼の背後で石のように静かに佇む近衛と彼を選び出した大臣だけ。給仕の娘すら遠ざけられ、辺りは炎の揺らぎすら響くほどの静寂に包まれている。沈黙に耐えかねてリュートが歌いだした。己の分身のようなその楽器は、むき出しの心と同じほどに雄弁であった。
「よい。聴かせてみせよ」
 忍耐のない吟遊詩人に苦笑を洩らし、王が促す。幾分ほっとして、トーラスは訊いた。
「どのような歌をご所望でしょうか」
「王の物語だ」
「それでは、タクラム谷の決戦などはいかがでしょう。卑劣な敵に対して我らがユレヒト王は――」
「出生の、物語だ」
「は」
 王に遮られて、一瞬言葉を見失う。赤ぶどう酒の杯が嘲笑うように揺れて、闇に消える。杯を仰いだ王は、トーラスの混乱を踏みにじるように一語一語噛んで含めるように言った。
「おれが、どこで、どうやって、生まれたのか、だ」
「は」
 混乱を押し隠して、今度は間違いなく了解の声を出す。しかし、王の言葉を理解したわけではなかった。即興で手を動かしながら、目まぐるしく頭を回転させる。そもそも、トーラスがここに来たのは、その物語を王から聞くためではなかったか。技量を見せるためにいくらか歌う必要はあるだろうとは思っていたが、元来の目的からすれば、トーラスはむしろ聞き手だった。だが、王は語れ、という。まだ知りもしない物語を語れ、と。
 一段とリュートを激しくかき鳴らして、トーラスは腹を括った。そこは練達の吟遊詩人であった。どんな荒唐無稽な話であろうと王がそれを歌えというならば歌うしかあるまい。実際のところ、王の生まれはまったくの謎というわけでもなかった。巷には、出所の怪しい説がいくつもまことしやかに語られている。トーラスはその中でもっとも真実味のあるものを選んだ。
 ――まだ先王が王位を継いで間もない頃の物語。蛮族に侵攻によって荒れるサトライダム王国。国内を平定しようと軍を率いて都を出た先王は、偶然立ち寄ったオアシスでひとりの奴隷娘と出会う……。
 そこまで歌ってから、トーラスはどこかの貴族の娘にしておくべきだったろうかと王の表情を盗み見た。巷の噂によれば、まさしく先王のお手つきにあった奴隷娘が現王を生んだことになっていた。王は母親の卑しい身分を恥じて、出自を隠したのだと。とはいえ、一度口にした言葉は破局した男女のように取り返しがつかない。トーラスは切々と歌い続けた。簒奪者の襲撃から辛くも逃れた奴隷娘が苦難の末に王を産み落としたまさにそのとき、シュリージャの方角に一筋の流れ星が夜空を真昼のごとく照らし出して流れ落ちていく様を。むろん、口からでまかせだったが。
「かくして王は生まれ落ち 人知れぬ荒野 アカシアの木の下に横たわる。民は新たなる王の生まれるを知らず 訪れた苦難の長きを知らず ただ流れる星を見上げ ただ希望の祈りを捧げるのみ――」
 リュートの旋律とともにトーラスの声が途切れたそのとき、部屋に哄笑が響き渡った。かつて目の前で招待主が乱痴気騒ぎを始めても平然と歌い続けたトーラスだったが、このときばかりは指も舌も凍り付いて動かなかった。王が芝居がかった笑い声を上げながら、そのくせ、酷く冷めた目で彼を見詰めている。そして、笑い声は始まりと同じ唐突さで消えた。何かヘマを踏んだのだろうかとそればかりを考えていたトーラスは、笑い声と静寂のあまりの落差に危うくちびりそうになった。
「おれが生まれたのは、確か昼間だった――ような気がする」
 ぴしゃりと膝を打って、王は控えていた大臣の名を呼んだ。首をはねられるに違いないと思って、トーラスの顔からさっと血の気が引く。
「下がれ。おい、こいつを連れて行け」
 両脇から屈強な男に引き立てられたトーラスは、まったく無造作に、ぽんと王宮の外に放り出された。門前で尻餅をついて、呆然と五体を顧みる。手も、指もついてる。目も、耳も二つ。首だってちゃんと繋がっている。五体満足。連れて来られる途中、懐に腕をねじ込まれたのを思い出して、トーラスははっとして胸板を探った。もしや大穴でも空いてやしないか。穴はなかった。ただ、一曲の謝礼にしては多すぎる量の金貨が出てきた。ずしりと重い黄金の輝きをまじまじと見詰めて、吟遊詩人は恐る恐る王宮を振り返った。それから、彼は一目散にその場を逃げ去った。
 王宮に入った語り手は二度と生きて戻って来ないだとか、王の前で語るだけで多額の金を貰えるだとか、怪しげな噂が出回るようになったのはそれからのことである。噂が広まるにしたがって、王宮を訪れる興味本位の語り手の数は減った。幾人もの語り手が王宮の門を潜ったが、未だに真実の王の物語を語る者は現れなかった。
 いつしか、サトライダムの王宮は、専業の語り手たちによる腕試しの場所となっていた。その傾向が顕著になるにつれて、最初は判で押したように噂話に色をつけただけの物語の中に、大胆な独自性を付加する者が現れるようになった。
 ある盲目の語り手は王の前でこう語った。
「先代の王がまだ若き王子であらせられた折のこと。少ない供をつれて遠乗りにおいでになられた先王は、不意の砂嵐に方向を見失われ、近くの洞窟に逃げ込まれました。すると、どうしたことか洞窟の奥から女の悲しげな声が聞こえたのです。好奇心を覚えた先王は、供の制止も聞かず中に入り込んで行かれました。洞窟は細く長く続き、至るところで大きく蛇行しておりました。それはまるで、大蛇が地中に潜った跡のようでございました。やがて洞窟の突き当り辿りつくと、なんとそこには錆びた剣で腹を貫かれた女が岩壁に縫いとめられていたではありませんか。女の腹からは、今も新しい血がとめどなく溢れております。女は先王にどうかこの剣を抜いてくださいと泣いて懇願しました。不可解な状況を王は不審に思われましたが、女の美しい顔を見ると、まるで魅了されたように言われるがまま剣を抜いてしまわれました。すると、女は赤い大蛇に姿を変え、先王の脇腹に噛み付きました。大蛇は裂けた口で笑うと、その呪いはおまえの息子にわたしの力を植えつける。おまえの息子は王でありながら、同時に悪の眷属となるのだ、と言って、一瞬で砂となって崩れ落ちてしまいました。大蛇は、王の祖先によって封印されていた邪神だったのです。先王は、知らずに王の血筋にしか扱うことの出来ない聖剣を抜いてしまわれたのでした。先王は三日三晩熱を出して伏せられ、回復したときには、腹に赤い蛇の形をした痣が出来ておりました。先王はそれからずっと蛇の今際の言葉が心を離れませんでした。のちに即位して王妃を娶られた先王のもとに、双子の王子がお生まれになりました。ひとりは健康な男の子でしたが、もうひとりの腹には先王にあるものと同じ、赤い蛇の痣がございました。それを見ると、先王は蛇の呪いに恐れをなして、その子供を人知れず幽閉してしまわれました。
 それから数年、簒奪者が王宮に押し寄せ、もはや自害する他ないというところまで、先王は追い詰められてしまわれました。ただ、血筋だけは絶やすまいと、幽閉していた子供を身代わりにすることで、王子を落ち延びさせようと考えなされた。幽閉された子供は、育てられた環境にあまりに違いがあったのにもかかわらず、王子とそっくりな姿をしていたのでございます。
 簒奪者どもが王の間に踏み込んだときには、先王も王妃も姫君たちも自ら喉を切り裂いて息絶えておりました。ですが、なぜか王子だけは、貫かれた脇腹を真っ赤に染めて死んでいたといいます。そして十五年後、王の子を名乗る男が、王座につきました。
 かくして王は、蛇の予言どおりに王座を手になされたのでございます」
 盲目の語り手が語り終わると、王は今まで聞いてきたどの物語とも同じように、やはり笑った。だがふと真顔になると、徐に衣服を捲り上げてこう訊いた。
「どうだ、おれの腹に痣はあるか」
「見えませぬ」
 それからも、相変わらず王の前には入れ代わり立ち代わり語り手たちが訪れては自慢の物語を披露していった。それは単なる日課か道楽のようでもあり、何がしかの真実を物語の中に探し求めているようでもあった。
 そしてあるとき、王の前にひとりの老人が現れた。薄汚い外套を被り、顔の半分は布、もう半分は灰色の髭に覆われていた。老人は腰を曲げ、よたついた足取りで王の前に跪いた。
「王さまや、王さま、是非あなたさまに聞いて頂きたい物語があります」
「よい、続けよ」
 王に許されると、老人はへっへっと気味の悪い声で笑った。顔を覆う布の下で、老人らしからぬ眼光が鋭く光った。
「これが、あなたさまの真実の生まれの物語でございます」
 そう言うと、老人はしわがれた声を一変させて、朗々とした語り口で話し始めた。
「ご存知でしょうが、二十年ほど前、簒奪者どもは王宮に押しかけて、先代の王さまと王子さまを殺しました。簒奪者の首領の男は、盗賊崩れのごろつきで、それは残忍な男でした。ほんの偶然が重なって連中の首領に担ぎ上げられたのですが、王宮を襲ったのは真実やつの意思でした。それだけ、金を奪うのも人を殺すのも女を犯すのも、ありとあらゆる残虐な行為が、好きだったのですよ。やつはお后さまのことは殺さずに陵辱しました。高貴な女が穢され絶望する様を見たかったからです。三人いるお姫さまもご同様でした。まあ、しかし、やつもすべて好き勝手にするというわけにはいきませんでした。王族の首を残らずはねて、完全に王の血筋を途絶えさせてやらねばならなかったのです。やつは王位なんてものは富と女の付属品くらいにしか考えていませんでしたが、やつを担ぎ出した連中にとっては重要事でした。連中は自分が簒奪者になるのがいやで、やつのような頭の悪い男に王を殺してもらいたかったのですよ。実のところ、やつは末のお姫さまに惚れていました。やっと十三になる小さな、可愛いお姫さまで、抱いているうちに殺すのが惜しくなったのです。そこで、やつは悪い頭を絞って策を弄しました。お姫さまと同じ年頃の娘を探し出すと、お楽しみの最中に「そそう」をしでかしたのだと言って、顔を二度と見れないくらいに殴りつけて殺し、本物のお姫さまは王宮の奥深くにこっそりと隠しておいたのです。しかし、ある日お姫さまは忽然と消えてしまいました。王宮には先王に与する裏切り者が潜んでいたのです。やつは必死に国中を探させましたが、とうとうお姫さまは見つかりませんでした。
 それから十五年して、王の息子を名乗る男が辺境で挙兵しました。やつは狂喜しましたよ。やっと、消えたお姫さまに会えると思ったからです。やつは戦うふりをして敵の軍勢を引き付けると、さっさと宝を持って逃げ出しました。首領が消えた簒奪者たちの軍勢は戦わずして崩れ去り、全員が盗賊と化して逃げ出していきましたが、やつは全然構いませんでした。もう王座には飽き飽きしていたのです。やつはみすぼらしい恰好をして、大胆にも敵軍の後方に入り込みました。そして、お姫さまのいる屋敷に忍び込みました。姫さまを攫って逃げるつもりだったのです。しかし、幸か不幸か、お姫さまは十五年前やつに何度も陵辱されたことによって正気を失っていました。お姫さまはやつの顔を見ると、恐ろしい怪物でも見たような叫び声を上げて、階段から足を滑らせ、首の骨を折って死んでしまいました。
 かくして王は、実の母親の死と引き換えに王位を得たのです。もはや、気の触れた姫さまから秘密が洩れる心配をしなくてもいいのです。王座は安泰です。サトライダムの王に栄光あれ!」
 はっはっはという哄笑が部屋中に響き渡った。しかしその声の持ち主は王ではなかった。老人は、もはや見た目よりも若い声を隠しもせずに笑っていた。
「ところで王さま、語り部に財宝をくださるというのは本当なんで? わたしはごらんのとおり無一文ですから、こちらで何ももらえないとなると、今の話を道端でやって御足を稼がにゃなりません」
 王はしばらく黙って老人を見詰めてたが、ついに低い声でこう答えた。
「いいだろう。ただし、くれてやるのは馬だ。馬を一頭やる。そこに食料を積めば南東の砂漠を越えられるだろう。海港都市にでも行って暮らすがいい。そして、二度と戻ってくるな。戻れば、おまえに命はない」
 老人の恰好をした男は不満げな顔をしていたが、つれてこられた馬の荷、食料の奥に隠された黄金の輝きを見るや、意気揚々と砂漠に乗り出して行った。
「おれはあの男の命を二度助けた。一度目は母上が死んだとき。二度目は今。だが、それは肉親の情からではない」
 城壁の上に立って、王は砂漠に消えていく男を見送った。腹心の大臣を脇に控えさせ、誰にともなく呟く。
「あの男は十五年王座にいたが、決して王ではなかった。それは、不当に王座を奪ったことが理由ではない。あの男は盗賊だ。ただ奪うに任せ、国を食い潰した。あの馬は砂漠を越えられない。重すぎる荷は馬を食い潰す。それに気づいて宝を捨てられるのなら、命は助かるだろう。だが、再び沈み行く船にただ胡坐をかいて座っているようならば――」
 王はそれだけ言うと身を翻して自分がいるべき王座へと戻った。
 やがて、語り手たちは王の前だけでは飽き足らず、酒場や町の片隅でも王の出生の物語を語るようになった。いつしか、巷には多種多様な王の出生の物語が溢れ、人気を競った。
 ある日、酒場で若い語り部が簒奪者の物語を語った。簒奪者こそが、実は王の父親であると。だが語り手は、途中で聴衆の不満顔に気づいて口を閉じた。
「そんな話は聞き飽きたよ。おれはあれがいいね、伝説の剣で竜の腹を掻っ捌いたら、丸呑みにされた赤子が出て来たってやつ!」
「おれは色気のある話が聞きたいね。ほら、先王が邪神女神に誘惑されるっていうあれよ」
「なんでもいいから、派手な話を頼むよ!」
 語り部は苦笑して、新たな物語を語りだす。
 かくして王は、長らく人々に語り継がれる王になったという。

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